檜皮葺とは「ひわだぶき」と読み、檜(ひのき)の樹皮を何重にも重ねて葺いた屋根のこと。
つまり、屋根上によじ登って、檜皮を葺く作業を行う前には、まず、ヒノキの樹皮を剥き取る作業から開始される。
檜皮葺の屋根は「こけら葺」や「茅葺(かやぶき)」など、同じく植物を使って葺かれた屋根の中でも最も格式の高い技法であり、古くから貴族の邸宅や寺社の屋根に用いられてきた。
7世紀(西暦601年から西暦700年までの100年間)後半にはすでに文献上に記録が見えることから、深々とした歴史を有する伝統工匠の1つとなる。
なお、「こけら葺き」とは「板葺き」の総称になるが、広義ではこの檜皮葺も「こけら葺き」の1つとなる。
有名なところでは、長野県の善光寺本堂、島根県の出雲大社本殿、広島県の厳島神社の本殿・諸殿などの屋根が檜皮葺が用いられてい‥‥‥申す。ヒワワっ(檜皮だけに…チワワみたい)
なお、国宝や重要文化財に指定されている檜皮葺の建物は全国に730件ほどあり、その中の150余件が京都市内に現存する。
その中の1つに清水寺本堂【国宝】がある。
檜皮を剥ぎ取って採集するのは「原皮師(もとかわし)」
檜皮を剥ぎ取って採集するのは「原皮師(もとかわし)」と呼ばれる伝統工匠たちの仕事です。
彼らは樹齢70年〜80年かつ、高さ約30メートルものヒノキによじ登って檜皮、いわゆるヒノキの樹皮を剥ぎ取っていきます。
使用する道具は、木ベラ、振り縄、腰ナタなどの七つ道具とも呼ばれる彼らにとっての神器を駆使し、鮮やかかつ、華麗な職人技でキレイに剥ぎ取っていきまする。
檜皮を剥き取る際は外皮だけを上手く剥ぎ取り、「甘皮」と呼ばれる内皮だけは残します。内皮残すことで再び、外皮が形成され約10年経れば再び、檜皮を採取できる。
なお、厳密に檜皮には「甘皮」以外にも、「荒皮」「黒皮」とがあり、荒皮は薄いことから文化財未指定の建造物に使われることが多い。
荒皮とは最初に剥ぎ取った檜皮のことを言い、黒皮とは荒皮の下にある皮となり、さらに厚みが増した檜皮になる。
檜皮の剥ぎ取りは簡単そうに見えて案外、難しい。また、果てなき集中力が必要になるので慣れない人がするとドッと疲れが、湘南に打ち寄せるサーフィン波の如く、押し寄せてくる。
また高所作業になるので高所恐怖症を克服しなくては仕事にならぬぅぁぃ。
以上のような理由もあって、原皮師は後継ぎ問題に直面している。
拵えた(こしらえ)皮
剥ぎ取った檜皮はそのまま全国の寺社などに輸送されるのではなく、ある程度、定まった形状に整形されてから輸送される。
その工程となるのが「拵え」になる。
拵えには主に檜皮包丁と呼ばれる刃先の上部が反り尖った専用の道具を使用し、長さ75㎝、幅15㎝、厚みをも整形して揃える。屋根の形に合わせて整形するのだが、おおむね形状は定まっていて、数十種類ある形状に成型される。
檜皮葺の葺き方
檜皮の厚さは建物の仕様によって若干、異なる場合があるが、おおむね後ろ側の幅10.5cm、厚さ1.5〜1.8mmほどの細長い形に加工された檜皮を5枚重ね、屋根の下から上に向かって1.2cmほどズラしながら仕上げていく。
もちろん、ただ置いていくだけでは檜皮が簡単に剥がれてしまうので、檜皮を重ねながら竹材を釘に仕立てた「竹釘(たけくぎ)」で固定していく。竹釘は長さ約3㎝、直径約2ミリほどで、最終的に固定した檜皮の厚さはおよそ10cmになるが、軒先だけは10㎝以上(数十センチ)の厚さにすることもある。
ちなみにこのような竹釘を使ったり、軒先を厚くしたりする技法は、平安時代以降に浸透したようです。
職人技の見せ所は、口に竹釘を数十本、咥え込み、上下にすばやく檜皮をズラしながら、竹釘を当てて、ハンマーを振り下ろしながら連続で檜皮を貼り付けていく。
なお、ズラす間隔は1.2㎝が基本とされる。左右の檜皮も6㎜ずつ重ねて貼り付けて(固定)していく。
これを連日のごとく繰り返し、屋根が檜皮で埋まるまで行ぅ。完成した屋根は30年〜35年もつとされ、その後、再び葺き替え工事が実施される。(金があれば‥‥お賽銭カモぅぉ〜ン)
檜皮葺の特徴
燃えやすい”火の木”
檜皮(ひわだ)つまり、ヒノキの皮は軽いので、瓦に比べて建物への負荷が少ない反面、時間が経つにつ入れて吸水力が落ちて乾燥し、燃えやすくなるという欠点もあります。
この燃えやすいという特徴が、清水寺の本堂が度重なる火災で焼失した要因の1つとも考えられます。
このため、古来、関係者の間では、別称で「火の木(=ヒノキ)」とも呼ばれるほどです。
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